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叔母

 
 ブログというものを始めるにあたり、自分なりにいくつか決まりごとを作った。
 “人生論は語らない”とか(←誰も私の人生論なんて聞きたくないですもんね・・・。)
 “文章は短めに”、“人のことは語らない”等・・・。
 だが、どうしても一人だけ書いてみたい人がいる。
 名称はここではあえて「叔母」としておきたい。
 これは私が物心ついた時より母のように慕ってきた「叔母」の物語である。
 物語風なのでいつもより少し長めです。
 
 「叔母」

 叔母が住む島は日暮れが早い。
 他にすることもないので、先日訪れた際は16時半頃になると夕飯の準備をはじめた。
 鶏肉を解凍して手羽先の煮込みを作った。
 すると叔母は、どこからともなくおもむろにキッチンペーパーを取り出し、
 それをこたつの上で丁寧に丁寧に小さく折りたたんだ。
 手羽先を食べるのに手が汚れるから用意しているのだという。
 あっという間に折り終わった。

 昔、この辺りはとてもにぎやかで、家は近所の人のたまり場になっていた。
 私などは「うるさくて昼寝できないじゃん。」と幼少ながらに思ったくらいだった。
 それが一人、また一人と亡くなり、
 祖父母のしんとした白黒写真が天井に飾られているだけになってしまった。

 日中、私が玄関の陽だまりを利用して読書をしていると、
 叔母はそこで靴下を叩いたり、忙しなく何度も行ったり来たりしている。

 西の風が強い島なので、夜になると障子がカタカタ音を立てる。
 ボットン便所(←水洗ではないので)に行く廊下を祖父が作った豆電球が薄く照らす。
 夜中にトイレに行くときは怖くて隣で寝ていた叔母をよく起こしたものだった。
 今では閑散としてしまった部屋に布団を敷いて叔母は毎晩一人で寝ている。
 
 叔母はきみまろのファンで、一緒にテレビを見ながら真似をしたり、
 手ぬぐいを頭にまいてひょっとこ音頭を踊ってみせた。
 電気のついていない隣の部屋も明るくなるようだ。
 朝起きると、手足をぶらぶらさせてゴキブリ体操なるものをしていた。
 寝起きの血行をよくするためらしい。
 
 私が行くといつも小さかった頃の写真を取り出してきて思い出話に花を咲かせる。
 それが終わるとまた食事の支度にとりかかる。

 昨日も今日もそんなに大きくは変わらない。
 明日も朝ご飯を食べてどこかしら掃除をしてまた昼ご飯の支度にとりかかるのだと思
 う。

 帰る日、叔母は坂の上のお店でお土産におせんべいを買ってくれた。
 高速船に乗ると、島はあっという間に小さく遠のいた。
 


 

 
by hyunbinharuka | 2007-11-07 17:31